音楽枕草子

クラッシク音楽や読書から趣味などの身辺雑記も含め、感想として綴ったblogです。

完聴記~アーノンクール/ロイヤル・コンセルトヘボウBOX②

今週は先月投稿しましたアーノンクール/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団による未発表放送録音集の完聴記シリーズVol.2(CD3・4)にお付き合い下さい。

曲目はハイドンのオラトリオ「天地創造」Hob.XXI-2の全曲です。

演奏データは以下の通りです。

(ソプラノ):ドロテア・レシュマン

テノール):カート・ストレイト

バリトン):アンソニー・マイケルズ=ムーア

アルノルト・シェーンベルク合唱団

録音:2000年10月22日 アムステルダム・コンセルトヘボウ(ライヴ)

現代オーケストラでありながらも、フレージングなども徹底した古楽奏法を身に付け、アーノンクール節の表現もできるこのオーケストラ。技術では世界でもトップ・オーケストラのひとつといえるでしょう。

ソリストはもちろん、コーラスも明確な発声できこえる声とオーケストラの表現が一致しているのは彼の声楽作品演奏の特徴といえるでしょう(手兵ウィーン・コンツェントウス・ムジクスとの録音と同様に)

こういった響きの美しさだけでなく、ざらついた古楽風の音色も表現されると中途半端な古楽奏法を模倣するモダン・オーケストラや、ただ「古楽器で演奏しています的」な楽団などの演奏がいかに多いことか!と実感させられます。

描写が作品をきくうえで非常に重要になる音楽ではやっぱり、アーノンクールさんの表現はこれでもかときかせてくれるところが多いです。

例えば、序奏もラファエルと合唱の極めて小さい声で歌われた後にくる「光」の描写を表すffのすざましい音!

その他、太陽が昇ってくる瞬間、鳩の鳴き声、ライオンや馬、鹿などの動物が創造されていく描写!第2部・第18曲でラファエルが魚について歌うところ―深い海の底を表す低弦の動きがより印象的です。

この作品を書いたときにハイドンは60歳を超えています。その表現力の豊かさに驚きます!

第3部・第30曲のデュエットとコーラスのオーケストラ伴奏の調和の美しいこと!これは古楽器ではなく、現代楽器で出せるマイルドな響きがあってこその再現芸術の極みでしょう。

気が付いたのは、神を讃える楽曲では重々しく、ややゆっくり目に演奏される傾向があります。私のように信心深くない人間でもこういった音楽をきくと神の存在を信じたり、賛美したくなってしまいます。

この録音は非常に会場ノイズが少ないので、音楽に集中できます。拍手があって初めてライヴだったことを思い出したくらいです。

改めて思いましたが、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団アーノンクールさんへの積極的な協力体制にも驚きます。とても古い話ですが、ウィレム・メンゲルベルクに率いられてとても特徴的な―歴史的名盤としてひと時もてはやされた「マタイ受難曲」―現在からはとても付いていけそうにない演奏をしていたのが約90年前。それから今や先月投稿した「ヨハネ受難曲」やこの「天地創造」のような演奏をきける、そのクラシック音楽の多様性にも感謝です。

 

そして、このディスクも「天地創造」の余白に1曲収録されています。

モーツァルト:コンサート・アリア「どうしてあなたを忘れられよう」K.505

 (ソプラノ):シャルロット・マルギオーノ ピアノ:マリア・ボン

 録音:1992年1月9日 アムステルダム・コンセルトヘボウ(ライヴ)

モーツアルトが想いを寄せていたといわれる、ソプラノ歌手ナンシー・ストレースがウィーンを去る際、モーツァルト自らピアノを弾いたことでその二人の仲をウワサされた!?コンサート・アリアの名作です。

実演という事もあるのでしょうか、ソリスト、ピアノ、オーケストラのピリッとした緊張感と高揚感のある演奏です。ピアノの音が近めに収録されているので、ソプラノ・ソロにピアノがオブリガートして寄り添いながら共演になっており、モーツァルト自身が「ソプラノとピアノのコンチェルト」といったそうですが、その本来の姿を現していると思いました。オーケストラはその二人を引き立てるように控えめです。

以上、今週はアーノンクール・ライヴ完聴記シリーズの2回目でした。

お付き合いいただきありがとうございました。