ショパンという作曲家は私にとってまだよく理解できていない―決してほかの作曲を理解したと思っているわけではないのですが、積極的にきいてくることをしなかったため、最近になって意識して近づくように努力しつつも、私の一方的な思い込みなのですが「好きな作曲家はショパンです」ということに赤面してしまうというか、言った後に下を向いてしまうような気がするのです。そういった作曲家は他にチャイコフスキーもいます。
それでも全くショパンを避けてきたわけではなくて、ピアノ・ソロでなないのですがチェロ・ソナタは秀作と思います、以前はルービンシュタインの輝かしいともいえるポロネーズ集やウィリアム・カペルの颯爽としたマズルカ集をきいてきました。
ショパンの作品のなかでマズルカ集は折々にきくことがあり、特にジャン=マルク・ルイサダが1990年に録音したディスクは廉価盤で入手して以来、愛聴しています。たしか今世紀に入り再録音もしていますがそちらは未聴です。
ジャン=マルク・ルイサダは1958年北アフリカのチュニジアに産まれ、教育はフランスで受けて1985年のショパンピアノ国際コンクール(ブーニンが1位になって話題になった)で5位になっているそうです(いうまでもなく著名なコンクール優勝者がその後の活躍が絶対に保障されているわけではない典型と言えます)
ショパンはマズルカを60曲近く残しており、その創作期間はごく初期の頃から若すぎる晩年まで、幅広い期間にわたっています。
マズルカとはポーランドを起源とする舞曲で彼の祖国に対するアイデンティティが込められた作品ともいえ、彼のワルツやノクターンなど作品に比べるとその時々の心情告白・内面が表出していると感じます。今でいうならXなどでSNS発信するみたいなものでしょうか?
ルイサダの演奏は2枚のディスクに作品6~68まで番号順に収録されており、1曲目嬰ヘ短調 作品6-1が鳴った瞬間、新鮮な音に引き込まれます。他の曲もリズム、生き生きとした響き、陰影のある表現も魅力です。
ロ短調 作品33-4では後半の左手のみで弾かれるメロディー、そして曲の終わりに左手が次第に音が止まるような緊張感。とてもきき応えがあります。
変イ長調 作品50-2。高音から始まって少ない音が序奏のような役割をして(これはバッハを連想します)所々で心の叫びではないか!と感じずにはいられないメロディーが出てきますが、ルイサダは決してベタベタ弾き方ではないので清らかな印象を受けます。
同様なことはイ短調作品67-4でもきかれます。
他の曲も発見や魅了されるところも多いです。こういう作品の奥深い世界があることを実感させてくれる演奏であればもっとショパンに接したいと思わせてくれます。