100曲を超える交響曲を残したフランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809)の第1番 ニ長調 Hob.I:1の番号をもつこの交響曲はボヘミア(現在のチェコ)のドルニー・ルカヴィツェのモルツィン伯爵に仕える宮廷音楽監督を務めていた1759年頃に作曲されたそうです(ハイドンの初期作品の研究は資料が少ないようであまり進んでおらず、第1番とされますが、この曲が本当にハイドンが最初に手掛けた交響曲かも謎らしいです)
編成は弦楽器(5部)にオーボエ、ファゴット、ホルン2本という小編成。3楽章形式という当時のイタリアのオペラ・シンフォニア(イタリア・オペラの序曲スタイル)の影響があります。

第1楽章:Presto(4/4拍子)
クレッシェンドによる音階が上昇してくところは当時流行のマンハイム学派―カンナビヒ、シュターミッツ父子のシンフォニーを連想する活気あふれる主題が展開します。まるで花火がしゅるしゅると夏の夜空に上ってドカンと大輪の華を咲かせる瞬間みたいな感じです。弦楽器の快速な動きと木管の装飾的な役割もそれらの影響をを受けているように思います。完全なソナタ形式による交響曲の前段階ではありますが、興奮と軽やかさが交互に登場して若々しいエネルギーに満ちています。晩年の大成したイメージが人口に膾炙していますが、1759年作曲としたら27歳の青年ハイドンとなります。
第2楽章:Andante(ト長調、2/4拍子)
弦楽器のみによる穏やかな緩徐楽章。優美な横に流れるようなメロディー、ヴァイオリンの絡み合いがバロック音楽の宮廷舞曲の面影を残しつつつも、古典派の透明感・清潔感があります。穏やかな曲
調がききての心を優しく包み込みます。
第3楽章:Presto(3/8拍子)
軽快で陽気なフィナーレ。弾みの良いリズムと楽しげなフレージングが魅力。弦のイキイキとした響きと歓喜の爆発、第1楽章の主題要素も回想的に現れるなど、統一感を持たせているのが特徴といえます。わずか81小説しかないのであっという間に終わってしまいます。また全曲も約12分と短く、やはりオペラ・シンフォニア・スタイルの作品であると思います。
恐らくハイドン作といわれなければ、シュターミッツ?カンナビヒの全古典派?バッハJr.かな?と思うハズです。嫌味のない音楽がこの時代における作品の特徴なのでしょっちゅうはきかないですが、嗜好には一致した交響曲です。
【Disc】
こんかいはハイドンの交響曲をご紹介するとともに先月亡くなったドイツの指揮者トーマス・ファイの追悼もしたいと思います。

1960年生まれのファイはニコラウス・アーノンクールに学び、ハイデルベルク交響楽団を組織し(最初に結成した室内オーケストラの進化してこの名称になったそうです)他にマンハイム・モーツァルト管弦楽団を結成するなど師の影響を受けてか、時代・奏法・編成などにこだわりがあったようです。しかし、ファイのスタイルは純正古楽器(ピリオド楽器)演奏ではなく、モダン楽器とピリオド楽器の融合にあります。
なりの良いモダン楽器に金管楽器や打楽器はピリオド楽器を使い奏法の特徴と魅力を最大限に活かして師にも匹敵するアグレッシブで精緻な響きをきかせてくれました。使用する楽器ではなく、音楽表現の最大化はこれまた師アーノンクールから受け継いだものでしょう。
注目&期待されたハイドンの交響曲全曲録音プロジェクトも半ばを過ぎた2014年に階段からの転落事故により重い脳の損傷を患ってしまい、とん挫して指揮活動も引退状態となってしまいました。そして先月6月27日(24日)に脳損傷の後遺症で亡くなってしまいました。享年65歳。本当に惜しまれる死去であります。
ファイの残してくれたハイドン、モーツァルト、サリエリ、ベートーヴェン、メンデルスゾーンなどをきくとその想いが募ります。
ハイドンの100曲を超える交響曲の出発点となった第1番をきいて青年ハイドンによる進取の意気込みを実感するファイの演奏を改めてお奨めします。
こちらは現在ハイドン交響曲全曲録音プロジェクト進行中のジョヴァンニ・アントニーニ指揮イル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏映像。こちらもファイのスタイルに近く、オーケストラはピリオド楽器です。
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弦楽四重奏曲第7番 嬰ヘ短調 Op.108(作曲・初演:1960年)