音楽枕草子

クラッシク音楽や読書から趣味などの身辺雑記も含め、感想として綴ったblogです。

生誕300年~作曲家カール・フリードリヒ・アーベル①

今週もアニバーサリーの音楽家の投稿となります。

生誕300年の作曲家カール・フリードリヒ・アーベル Carl Friedrich Abel (1723.12.22~1787.6.20)です。

アニバーサリー・イヤーでも誰も気にしない作曲家であるとは思いますが、私にとっては思い入れのある方なので、ここにひっそり投稿しておきます。

恐らく多くの音楽をきく方にとって「アーベル」への認識は「知らない」「名前だけで知っている」「興味なし」という声が多いでしょう。もしくは、後で書きますがクリスティアン・バッハやモーツァルトとの関係で文献上で知っている方もいるかも知れません。

しかし、私にとってはクラシック音楽をきき始めた10代後半の頃から接してきたので親しみがあります。当時、CDやレコードをポンポンと購入することができないので、NHK-FMなどの放送は大切な時間でした。

「朝のバロック」(いまは「古楽のたのしみ」に変わっていますね)は大好きな番組のひとつでした。

その放送できけた音楽は、とても快く、ゴチャゴチャしたところのないテーマ―展開部―終止といった明確な構成、明朗な表現、そして一般的になってきたオリジナル楽器による演奏とも相まって、面白がってきいていました(当時の私にとって『バッハ』とは『大バッハJ.S.バッハ』ではなくて「カール・フィリップ」や「クリスティアン」といった息子たちを示すものでした)

その頃は海外盤も簡単に手に入るような環境になかったので、このような珍しいレパートリーをFM放送で接する機会が楽しみでした(エア・チェックして繰り返しきいていました)

こうして一時、ベートーヴェンシューベルトといった王道レパートリー!?を外れ「前古典派」と呼ばれる(音楽史では後期バロックからウィーン古典派の初期頃の時代)バッハの息子達やマンハイム楽派の音楽を中心にきいていたことがあり、そのアーベルと接するキッカケになったのは、今年閉店されてしまったディスクショップ「クレモナ」さんのレコード棚で偶然見つけた事にあります。

ヴィオラ・ダ・ガンバを抱えたアーベルの肖像画のジャケットを見て―アーベルという作曲家も、ヴィオラ・ダ・ガンバという楽器すら知らずーただ、その衣装からバロック期か前古典派の音楽であることに目を付け、ジャケットの裏側を見ましたが輸入盤の為、分かったのは作曲家名と生没年、交響曲集作品7(全6曲)であること、他に「J.S.バッハ」・・・「ハイドンの」・・・「モーツァルト父子がロンドン滞在中・・・」などと書かれており、これは大好物!?の「知らない前古典派の作曲家だ!」と思い購入しました(演奏家も良く解らずに・・・)

演奏家データ

 指揮:エイドリアン・シェファード/カンティレーナ

 録音:1987年8月 グラスゴー、ヘンリーウッドホール(デジタル)

きいてみてハズレではありませんでした!明るく伸びやかなメロディー・ライン、緩徐楽章の歌心に溢れた穏やかに流れる旋律。終楽章の弾む生き生きとしたリズム!弦楽器の動きや管楽器の使い方も巧みで、とても親しみやすい交響曲です。それはモーツァルトの初期の交響曲と通じるものがあります。それもそのはず、モーツァルトがロンドン滞在中に人気作曲家であったアーベルやヨハン・クリスティアンの作品を学習用の教材として写譜したくらいです。

それが災いして?この作品7の交響曲集の第6番 変ホ長調は長く、モーツァルトの「交響曲第3番 変ホ長調 K.18」として伝わり(それも正式なケッヘル番号が付与されて!)出版されていました(オーボエ・パートをクラリネットに置き換えて写譜したものが残っているそうです)

ここでアーベルの生涯をざっとご紹介しておきます。

J.Sバッハが宮廷楽長を務めていた、ケーテン宮廷楽団の首席ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者であったクリスティアン・フェルナンド・アーベルの息子に生まれ、ドイツで活動後、パリからロンドンに移り、シャーロット王妃お抱えの楽団員となりました。そして、同時期にロンドンで活動を始めたJ.S.バッハの末息子ヨハン・クリスティアン・バッハとタッグを組み、共同名義で「バッハ=アーベル・コンサート」を主宰して成功を収めました。

このコンサートは本人たちの作品だけでなく、ハイドンをはじめとした音楽を演奏したり、当時の有名演奏家も登場したそうです。

モーツァルト父子がロンドン旅行で訪れたのは、そのコンサートが大盛況の時期であり、先にも書いた通り大きな影響を与えたそうです。

しかし、晩年は大成功を収めていたコンサートも経営難となり、それも影響してでしょう、飲酒に溺れて亡くなったそうです―その生涯は彼が名手といわれたヴィオラ・ダ・ガンバが、時代と共にチェロに取って代わられて廃れてしまったことにも重なります。

今回はアニバーサリーでも注目度は少ない作曲家、カール・フリードリヒ・アーベル氏を取り上げました。

次回投稿の折には手持ちのアーベルのディスク紹介をしたいと思います。