音楽枕草子

クラッシク音楽や読書から趣味などの身辺雑記も含め、感想として綴ったblogです。

Selct Classic(15)~ニールセン:カンタータ「フューン島の春」

カール・ニールセン(1865~1931)はデンマーク生まれで、フィンランドシベリウスノルウェーグリーグと並ぶ北欧御三家?といえる作曲家といえます。作風は20世紀まで生きていましたが、19世紀のロマン派の音楽を指向してるので耳に入ってきやすいです。私は彼の作品はそんなに多くきいているわけではありませんが、今回ご紹介する1921年に完成された独唱、コーラスと管弦楽によるカンタータ「フューン島の春」作品42はこの季節にふさわしい清々しい気持ちになる作品です。

ニールセンの出身地フューン島(ノーレ・リュンデルセという村で生まれたそうです)へのふるさと賛歌といえる作品で、1分から2分位の8曲がその地の風景を描写していきます(歌詞はデンマーク語で歌われます)

第1曲「雪がとける時の芝生の緑のように」は合唱とオーケストラののびやかで美しいく海を渡ってくる風を感じます。その後はソプラノ、テノールバリトンによる各ソロが続き「穏やか」「清らか」な音楽にきき惚れます。しかし、その中でモダンなリズムが箇所もあって、オルフの「カルミナ・ブラーナ」を感じさせるのが印象的です(オルフの方は1936年の作曲)
若者たちは賑やかに、老人たちはあと何回この季節を迎えられるかとかみしめるように、子供たちは無邪気にそれぞれの世代が春を迎えた様子が描かれます。

5曲めには盲目の楽師登場してクラリネットを吹きます。このバリトンによって歌われる音楽は、村の楽師をしていたニールセンの父親へのオマージュといわれています。

終曲では春の到来を高らかに活気を持って謳いあげますが、この部分は一度きいたらしばらくは耳の奥でリフレインしてしまいます。

行ったことは無いですが、フューン島の海や風、牧歌的な空気をたくさん感じられる、長い冬が続いた北欧だからこそ春の到来を喜んでいる様子が伝わってきます。
それが決して声高に自己主張するお国自慢をするような音楽ではないぶん、多くのきき手に愛されるとではないでしょうか?

《Disc》

ソプラノ:オーサ・ベーヴェンシュタム
テノール:シェル・マグヌス・サンドヴェ
バリトン:ペール・ホイエル
ガール・ソプラノ:リンネア・エクダール
ボーイ・ソプラノアンドレーアス・ソルス
スヴェーデン放送合唱団/ストックホルム少年合唱団
スヴェーデン放送交響楽団
指揮:エサ・ペッカ・サロネン

この盤しか所有していませんが、さすが「合唱王国」スヴェーデン。

サロネンの手腕もさることながら透明感ある演奏です。