音楽枕草子

クラッシク音楽や読書から趣味などの身辺雑記も含め、感想として綴ったblogです。

Selct Classic(6)~ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ第4番

バロック音楽の大家バッハとヘンデル
近年のピリオド・オリジナル楽器系の演奏家のレパートリー拡大により、大きくバッハに水をあけられていたヘンデルも、オペラが上演されることが多くなって肩を並べようとしていますが、まだまだ一般的には「メサイア」と「水上の音楽」の作曲家であり(恐らく一番聞かれているであろう、スポーツ大会の表彰式で耳にする「マカベウスのユダ」の「見よ、勇者は帰る」は、一般的の方にはヘンデルの音楽と認識されていませんので除外します)「ネクラのバッハ」に対して「ネアカのヘンデル」というイメージです(現代用語だと「陰キャ」と「陽キャ」というのかな?)

クラシック音楽ファンとしては、眉間にシワを寄せて「マタイ受難曲」や「ミサ曲ロ短調」をきき素晴らしい!といっていたほうがカッコいいのでしょうが・・・時として『バッハはツマラナイ』・・・と山奥に穴を掘って叫びたくなるときがあります―

マタイ受難曲」をきいていて、ゴルゴダの丘に到達するまで何度挫折したことか。。。それに比べ「メサイア」の太陽の光が差しているような明るさ―受難の場面でも深刻になりすぎず―そして「水上の音楽」や「王宮の花火の音楽」の華麗な響き!どの曲もとっつきやすいのです。

こんな連日暑い日にぴったりのヘンデルの作品から、ヴァイオリン・ソナタをきいてみるのはいかがでしょうか。

1731年~1739年、イギリスにて活動中のロンドンで作品1として出版された曲集は、他にフルート(トラヴェルソ)やオーボエを独奏楽器にした曲も含まれており、その中から第3番・第10番・第12番・第13番・第14番・第15番の6曲がヴァイオリン・ソナタとして弾かれます。

特別なテクニックを必要としないので、ヴァイオリンを習ったことのある方は弾いたことがあるという方もいるかもしれませんが、その中から第4番ニ長調HWV371(第13番)をご紹介します。


楽曲の基本構成は、イタリアの作曲家コレルリが始祖のコンチェルト・グロッソ(合奏協奏曲)などと同様に「緩―急―緩―急」の4つの楽章からなっています。


第1楽章アフェトゥオーソのしっとりと歌い上げるようなメロディーから、第2楽章アレグロで明るさを加えながら、ヴァイオリンの技巧もしっかりきかせます。第3楽章ラルゲットでは息の長い感情が込められた音楽で、ヘンデルが参考にしたといわれる、パーセルのオペラの一節が思い浮びます。終楽章アレグロの跳ねるような舞曲風のリズムが躍動感も素敵です。

 

【Disc】

愛聴盤アルテュールグリュミオーは第3楽章の憂いを帯びて泣きが入ったようにきこえる音、磨き抜かれた音色、全曲を通じて気品が漂ってきて大好きです。また、チェンバロのロベール・ヴェイロン=ラクロワもグリュミオーに寄り添うようで、まさに共演といえる距離感もいいです。

それからもう一枚。
ヒロ・クロサキのヴァイオリン―この人はオリジナル楽器によって弾いているのですが、とてもレスポンスが速い演奏で、楽譜から読み取ってそのまま音になっているといっていいのか―きいていてとても快く、特に終楽章のリズムなんかも少し挑発的で、グリュミオーの「品」に対して「劇的」なものが与えられます。ウィリアム・クリスティチェンバロもキレがよくてヴァイオリンと共にお互いが刺激し合い、主張しています(このディスクには6曲のソナタの他に、偽作とされる2曲も収録されています)