音楽枕草子

クラッシク音楽や読書から趣味などの身辺雑記も含め、感想として綴ったblogです。

C.S.フォレスター「ホーンブロワ―・シリーズ」を読みました

今週は音楽を離れて最近読んだ本のことから―

イギリスの作家セシル・スコット・フォレスター(1899~1966)の書いた代表作で海洋冒険小説の傑作のひとつ 海の男/ホーンブロワー・シリーズ(1)『海軍士官候補生』(ハヤカワ文庫)を読みました。以前、絶筆となったシリーズの番外編ともいえる『ナポレオンの密書』が発売されたとき面白く読んだ記憶があり、いつか全シリーズに挑戦したいと思っていたところ、古本店で文庫本を見つけて購入しました。

この作品は18世紀末から19世紀初めにかけてイギリス海軍に入隊した平民出身の主人公・ホレイショ・ホーンブワーが様々な戦闘や経験を積みなが自分の船を任され、貴族まで上り詰めていくサクセスストーリーです。しかし、ホーンブロワー自身は決して万能な人間ではなくて船乗りなのに船酔いをしたり、当然、帆船の時代なのでマストの上に乗らなくてはならないのに高所恐怖症であったり、そして敵国であるフランスでは革命で身分制度が崩れていましたが、イギリスではまだ貴族社会であったので平民出身の彼にとってはとても大きな壁になります。
この「海軍士官候補生」でも、最初に赴任した船であまりに実直であったため、同僚と決闘騒ぎとなったり、初めて指揮を任された拿捕したフランス船をミスから沈めてしまうなど・・・成功だけでなく戸惑う姿も描かれ、その様々な困難を乗り越えていく姿に私なんかは会社での仕事などと重なり合わせて読みました。また、スリルある場面展開、ユーモアやウィットもあり読みどころも満載です。

1冊が短編集のようになっていて話が進んでいきます。それは原書が新聞だったか雑誌に掲載されていたためで、作品の順番も時系列で発表されたわけではなくて、1937年から1967年にかけて書かれたものをホーンブロワーの入隊から貴族になるまでに並べ直して出版されたのが、このハヤカワ文庫で刊行されている「ホーンブロワー・シリーズ」と呼ばれるものです。

当然、ホーンブロワーは架空の人物なのですが、先にあげた特徴にもあるようにキャラがいきているので感情移入できるタイプといえるでしょう。イギリスでは知らない人がいないくらいの小説の主人公らしいです。

そして、音楽の面からみるとホーンブロワーは音痴という設定になっています。ご存じのとおり、当時イギリスには有力な作曲家がおらず、音楽は輸入品?扱いみたいなもので、国外の音楽家がロンドンで活躍しており、古くはヘンデルから始まり、バッハの息子クリスティアン、カール・フリードリヒ・アーベルなど、そしてハイドンモーツァルトも演奏旅行に行っています。(17世紀に起きた、ピューリタン革命の指導者クロムウェルによる音楽排斥行為が影響しているという説があります)きっと出身からも想像すると、彼もまともな音楽教育を受けることができなかったのでしょう。

シリーズ(2)『スペイン要塞を撃滅せよ』と(9)『セーヌ湾の反乱』を先日購入しましたが、既に絶版となっている書籍ですので、全10巻をコツコツ集めていきたいと思います。