音楽枕草子

クラッシク音楽や読書から趣味などの身辺雑記も含め、感想として綴ったblogです。

ルートヴィヒ2世関連書籍を読む

バイエルン第4代国王のルートヴィヒ2世(1845=1886)はノイヴァンシュタイン城をはじめとした数々の築城、ワーグナーに心酔しバイロイト祝祭劇場の建築に入れ込みすぎ、国の財政を圧迫させ、政局の混乱を引き起こし廃位された後に謎の死を迎えた、ある意味「失格国王」として歴史に名をとどめています。

私はもっぱらワーグナーの音楽との関連で上記の内容くらいしか知らず、映画やドラマ化されたその人物像・治政にも興味があり、中古本を店頭で見つけたの機に購入しました。

『狂王ルートヴィヒ』 夢の王国の黄昏

著者:ジャン・デ・カール 訳者:三保 元 中央公論社刊(1983年)

まず、彼が建築に携わった城が有名なノイヴァンシュタイン城だけでなく、多数あるということです(それに最先端の技術導入もされたということも)

フランス国王14世(絶対王政期に太陽王と呼ばれフランス王国の絶頂期を築いた。4歳で即位し、その在位期間は驚きの72年間!!)に憧れたルートヴィヒはこれまた有名なヴェルサイユ宮殿などの建築物を模した城を次々と建築しました。

そんなことをしていればさすがに国家財政も厳しくなります。

ワーグナーへの入れ込みもそれと同様と言えるでしょう。私は単純に2人の利害が一致し、バイロイト祝祭劇場の建築とオペラ上演がおこなわれたものの、赤字が増え続け国家財政危機に瀕した為、陰謀によりワーグナーが追放されたと思っていましたが、ルートヴィヒのワーグナーへの心酔・尊敬から親密~すれ違い・摩擦~別離までのいきさつがあり、結果的にワーグナーが国外退去に至った状況が詳しく書かれており、これは勉強になりました。

また、祖父のルートヴィヒ1世も女優ローラ・モンテスという、札付きの魔性の女性に入れ込みすぎてスキャンダルとなり、結果的に退位する原因となったという、隔世遺伝?についても知ることができます(でも、孫は逆に、女性には興味が無く、男性に非常に興味を持っていたことを残された手紙などから、それぞれの男性との関係も書かれています)

この本で、ルートヴィヒ2世は「狂王」というよりも、メルヘン的な志向を持ち、性格的にひきこもりでり、それ故に精神的にも不安定でなところがあり―現代的にいうなれば「心の病」を持った人物で、政治を主導的に動かすことよりも、自分の好きなことに熱中し過ぎてしまったーそれを理由にやや好意的な伝記物語といった感じで描いているので、抵抗なく読めるとは思いますが、そのことにより国家が存亡の危機に瀕してしまったことは考えさせられるところではあります。

王国・帝国の後継者は世襲制(今も世襲議員と言われる人も居ますが)だったので、その人物の資質に問わず、その地位は産まれた時から保証されていましたが、現在は国民に等しく与えられた「選挙権」があります。

国民一人一人が、良く考え「選挙権」を行使すれば、優秀な人材をリーダーにすることもできます(もちろん世襲議員も選別させることができます)

ルートヴィヒ2世の書籍感想が、政治の話になってしまいましたが、後世に残る美しい建築物=これらの建物、特にノイヴァンシュタイン城は、今はバイエルン州の需要な観光資源になっているそうです。そしてワーグナーの作品上演に特化したバイロイト音楽祭が現在まで続き、「ニーベルングの指輪」や「トリスタンとイゾルデ」、「パルジファル」などをきくことができる文化・芸術への貢献。の反面、国家をを預かる身分であったのですから、せめて収入収支を考えて政策実行していれば、政治能力はそこそこ、文化的センスも持った国王として名前を残せる事もできたのに…と思いました。

それに現代の目から見ているので、一定の評価できることがもうひとつあります。

1866年に勃発した「普墺戦争」において、ルートヴィヒ自身は参戦を嫌ったものの、議会からの圧力でを受け渋々とオーストリア側についたバイエルン王国。結局敗北したものの、プロイセンの宰相ビスマルクルートヴィヒ2世の立場や人物に好感を持っていたようで、賠償金と領土の割譲を要求のみで、王国の独立を保ったことです。

領土の拡大と国力強化が目標であった時代に平和主義的な考え方。国民の死傷者の山を築くことよりも、城を築くことに力を注いだことです。

そういった意味では、ルートヴィヒ2世は「ゆとり世代」とか、「最近の若い者は」と言われる人物であったかも知れません。