音楽枕草子

クラッシク音楽や読書から趣味などの身辺雑記も含め、感想として綴ったblogです。

「レコード芸術」休刊に思ったこと

2023年7月号で休刊される音楽之友社刊「レコード芸術

このニュースを知った時は「やっぱりね」という気持ちと「寂しい」という思いが交差しました。

私の定期購読歴は1989年から2015年頃までで、定期購読をしなくなったきっかけは、日本を代表する音楽評論家、吉田秀和さんがお亡くなりになり、その連載が終ったことが一番の理由です。他にも特集記事に既読感(毎号名盤案内や名盤ベスト選出、有名な演奏家ばかりを取り上げたり)が漂い始めたからであります。

あまり「昔は良かった~」的な話をしたくはないのですが、連載や月評(発売されるディスク一枚一枚に評論が掲載)を執筆される方々が個性的!?で、例えば先の吉田秀和さんはもちろん、独断と偏見??で演奏家やディスクを斬っていた宇野功芳さん(ある時期からこの方の文章は、反面教師的な意味合いが大きかったですが・・・)。オペラでは黒田恭一さん(柔らかい語り口の中に、音楽への情熱があり、オペラに近づくきっかけをいただきました)。古楽バロック音楽では皆川達男さん(ヴィヴァルディを「赤毛の司祭」と読んでいたのが印象的)、所謂「お国物」重視(作曲家出身国の演奏家による演奏こそが素晴らしい。という考え方)の志鳥栄八郎さん。明晰な楽譜分析(そのお陰でシューベルトシューマンを深くきけるようになりました)と、ウィーン文化の空気を感じさせてくれる前田昭雄さん(現上野学園大学学長)など。経験と知識ーそこには好き嫌いも入っており、読む方によっては苦手な方もいたと思いますが、私はそれぞれの評論家先生に、音楽のきき方や接し方など、色々と学ぶことも多かったです。

しかし、近年はこの評論家の書いた文章だから読んでみたい、という物も無くなり、レコード芸術を購入する頻度は皆無になり、立ち読みで中味チェックすらしなくなりました―最近では別冊・ムック本の「新時代の名曲名盤500+100」を購入しましたが、以前ブログで投稿した通り、内容・構成共にビミョーな物で、「新時代」と銘打ったことをいいことに選者の「今の推し盤」を選んだだけ。みたいな感じで、数年後に実施したら(これは休刊により叶わないものになると思いますが。。。)また違う新譜が上位になったりと、これはもしかすると、レーベルも含めた業界による新譜を買わせるための「出来レース企画」では?と勘ぐりたくなります。

以前は実家の部屋の片隅に山と積まれていたレコード芸術。2003年頃に主要な特集・記事のみを切り抜き、ファイルに綴じて保管し、全て処分しました。それ以降は毎年1月に、前年分12か月分を同じように必要な特集と記事のみ残して処分して、溜まらないようにしてきました。しかし、それも引っ越し・片付けなどで相当減らしました。

今手許に形として残っているのは2014年3月号(緊急特集:アバド追悼他)と2016年5月号(特集:アーノンクール追悼)、そして創刊800号記念の2017年5月号の3冊のみで、他はファイルに綴じてあります(以下にその一部の写真を掲載させていただきます)

       

       

       

       

       

       

       

          


*一番下の写真はレコード芸術読者ならご存知の、毎年1月号の付録だった「レコード・イヤー・ブック」です。

前年1年間に発売された全ディスクをまとめられており、買いそびれたCDをチェック用に最適でした。その頃はまだそれなりの点数のディスクが再発売も含めるとありました。また、巻末に録音デビューした演奏家や、亡くなった演奏家も記録されていたように思います。

まだ情報も少なく、またその情報入手方法も知らなかった中学生~20代前半くらいに夢中になって読んだ「音楽書」と言ってもいい教材で、まさに月刊誌の名に相応しく、内容も盛りだくさんで、理解が追いつかず1カ月かけて読んでいた事もありました。

私のクラシック音楽鑑賞の基礎~枝葉を広げてくれた音楽之友社様の「レコード芸術」に感謝です。