音楽枕草子

クラッシク音楽や読書から趣味などの身辺雑記も含め、感想として綴ったblogです。

音楽之友社刊「新時代の名曲名盤500+100」購入

老舗音楽出版音楽之友社さんの、これまた長い歴史のある「レコード芸術

既に発行から半世紀を経ても健在?な由緒正しい音楽雑誌です。

しかし、近年の出版状況や新譜録音の販売減などが影響してか、中身は薄く、価格は高いといったイメージで、ここ数年は書店かディスクショップの店頭で立ち読み程度のお付き合いでした。

その紙面の名物企画であった「名曲名盤選」シリーズ。

評論家が曲ごとに推薦盤に点を入れ、その加点により、モーツァルトのレクイエムなら1位ワルター、 2位ベームみたいに選出され、だれがどのディスクが何点いれいている、だれがどの演奏を推している、などの内訳表と講評まで掲載されている、ある意味でクラシック音楽だからこそ、生息しているような企画でした。

若い頃は購入の参考にしたり、持っているディスクが高得点で1位を取得したり、またその逆で、下位もしくはランク外だったり、一喜一憂しつつ、興味を持ってみていました。

昨年迄、誌上で連載していたこの企画が1冊にまとめられ、ムック本として発売されたので、久しぶりに購入をしました(以前は定期購読をしており、掲載分はスクラップしていて、購入の必要もなかったので)

 

 

購入した理由は「新時代の名曲名盤500+100」と名乗っている通り、選出されているディスクに大きな変動があるためでありました。

以前は、誰にも有無を言わせないというレコード(CD)が存在しましたが、それが一新されています。

まだ斜め読みしかしていませんが、目についたのが、J.S.バッハマタイ受難曲といえば=カール・リヒター&ミュンヘン・バッハ管弦楽団が君臨していましたが、遥か下位に―ミサ曲ロ短調ヨハネ受難曲、クリスマス・オラトリオでも順位を落としています。同じくバッハの鍵盤楽器作品「ゴルトベルク変奏曲」=グールドの新旧録音だったのが、1位と大きく差が開き、新録音が2位に入ったくらいで、平均律やパルティータも下位に沈んでいます。

そしてベートーヴェン交響曲第5番フルトヴェングラーベルリン・フィル復帰の1947年盤、第9番もいうまでもなく、フルトヴェングラーの1951年バイロイトのEMI盤が当たり前のように1位でしたが、陥落しています。

他にもブルックナー交響曲についても、近年の決定盤といわれたヴァント盤が1位を取っているものは無くなりました。マーラー交響曲も、あのバーンスタイン盤は第2番と第9番で1位で、他は最近の録音になっています。

書きだせばきりがないですが、ラヴェルはクリュイタンス、ショパンはフランソワでもなくなっています。

このように「新時代」と銘打っているだけあり、大きく名盤選が変化していることを実感しましたが、これは選者が変わったということもあるとは思います。以前は有無を言わせぬ大物評論先生方(宇野功芳さんとか)がフルトヴェングラークナッパーツブッシュバックハウスなどを「精神性」がある、という好き嫌いだけの感想だけで評論的な事をしていた時代もありましたが・・・

そういった評論もなつかしいですが、現在の評論家と云われる方々は、西洋史、文化史をはじめ、詳細な楽譜の読み込みと原典主義があり、演奏家もその研究成果を披露するので、それを理解できなければいけない事情もあり、評論家と同時に、研究家にもなっている側面があり、またそれを理解して演奏していない演奏は「新時代」の名曲名盤には選出できない。という表れでしょうか?

そこに、なるべく新譜を売りたいレーベル側の事情などを慮っての結果でしょうか?

そして気になった点をいくつか。

 

昔の特集のスクラップ

ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲が第8番だけ。また、ヘンデルモンテヴェルディのオペラ作品が少ない(ヘンデルは無し)―これは映像パッケージ商品が多いせいでしょうか?現在これだけバロック・オペラ復興が成ったのに。

そして、今後検討していただきたいのは、CD(録音)と映像作品の選出について。

名曲名盤選に映像作品は除外されていますが、個人的にはR.シュトラウスの楽劇「ばらの騎士」にカラヤンカルロス・クライバー盤が、ブラームス交響曲第2番に同じくクライバーウィーンフィル盤)が入っていない(入れられない)のは残念です。

オペラの映像販売は多いので、音楽之友社さんも出版業界、特にこの分野の継続的な出版は大変かと思いますが、検討課題として下さい。

選出曲の中で、シベリウスのオーケストラ作品集で一括したのは慧眼。いつまでも「フィンランディア」って時代ではないですからね。ついでにリストの「レ・プレリュード」とかも止めれば良かったのに(「新時代」と銘打っているので、2000年以降新録音の無い作品はノミネートしないとか・・・)