2023年もまだひと月ちょっとですが、個人ニュース(趣味版)があるとしたら、1番となることがありました。
長野県松本市にある老舗クラシックディスク専門店の「クレモナ」さんが本年3月末日をもって閉店することであります(涙)
(このブログで「ディスクショップ」として、度々登場していたお店であります)→以前投稿していたblggerの情報です
中学校2年生の頃、担任であり、音楽の先生であり、私がクラシック音楽が好きになるきっかけを与えて下さった、恩師の紹介でお伺いするようになったので、約35年のお付き合いをさせていただいてきました。
このニュースを新聞で知った私はご挨拶と御礼を兼ねて出掛けてきました。
ここ何年かは息子の野球があり、まともに音楽をきくこタイミングも少なく、ご無沙汰をしていることもありましたが、今年は息子の野球も手が離れ、受験も終了し、高校生になれたので、やっと音楽と趣味に時間を使うことができる!!と思っていた矢先に、この閉店されるというニュースだったので驚きでした・・・
などということも、ご店主に話したところ「あの小さかったお子さんが高校生!?」と年月の過ぎるのは速いということから、先のブログにもアップした、音楽之友社の名曲名盤選の定番ディスクの大きな順位変更の話題となり、ご店主曰く「新譜売りたい・人気取りの演奏は長続きしない・何年後かにはまた順位が入れ替わってますよ」という趣旨のことをおっしゃっており、今でもリヒターやクレンペラーのマタイ受難曲がきかれて(売れて)いるのは間違いのない事実、というご意見に激しく同意しました。
「でも、今の時代にクレンペラーみたいな演奏をしたらお客さん怒ってしまうけれども」ということも言われており、なんでもオリジナル楽器・ピリオド演奏への賛美というか、翼賛方向になっていることに、半世紀以上に渡りクラシック音楽をご商売にしてきたプロとしての警鐘、そして心意気を感じ、深く共感しました。
店舗では閉店のセールとして、50%OFFにてディスクの販売を行っています。
この価格ではご商売にならないでしょう?という質問に「もちろん赤字ですよ。でも閉店の時に売れ残っていてもしょうがないしね」という言葉に、松本市という地方の小都市で、全国的にも珍しい「クラシックディスク専門店」の看板を掲げ、半世紀に渡り文化の灯を守ってきた、店主金森さんのプロとしてのプライド、そしてこの地のクラシック音楽愛好家&クレモナファン=店主・金森さんファンへの贈り物であると感じました。
新聞に閉店の記事が掲載されたら、常連客だけでなく、新規のお客さんも来店し、たくさん売れたそうで、多くの空きの目立つ棚を見て、昔はズラリと並んだディスクを前に、お宝発掘のようなワクワク感と期待で、1時間も店内を見て回り「こんな演奏家のあんな曲」「こんな曲のあんな演奏」などと、現在のように簡単に情報を手に入れることのできない時代に、有益な情報源となっていた事を感傷的に想い出し、少し寂しい気持ちになりました。
以下、今回のお買い物リストです。
①ヴェルディ:歌劇「仮面舞踏会」
*ドミンゴ等の豪華歌手を擁して1989年のザルツブルク音楽祭の目玉となる公演であったが、カラヤン死去により、録音のみ残され、結果的に最後のオペラ録音となった(それもカラヤン初録音となった演目)
*題材が物騒なので、舞台をアメリカに移した改訂版でなく、原典通りスヴェーデン王宮としているのもカラヤンのこだわりか?
*輸入盤からの買い直し用(カラヤンのグラモフォンのジャケット・デザインはレベル高い)
アーノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス リコーダー:フランス・ブリュッヘン他
ピアノ:アナトリー・ヴェデルニコフ
*入手困難なヴェデルニコフのディスクを発見したので確保。
*ご店主から「ヴァデルニコフはいい演奏家」とお墨付き&私の選択を褒めていただきました。
そして、この際(メモリアル)だからとLPレコード(中古)を購入(プレーヤーは自宅に無いのに・・・)
①ワーグナー:楽劇「ローエングリーン」(全曲)
カラヤン指揮ベルリン・フィル、ローエングリーン:ルネ・コロほか
*国内盤CD入手困難(廃盤)であり、国内LPで対訳付きなので購入。アンナ・トモワ=シントウ、カール・リーダーブッシュという豪華キャストにて録音したものの、タイトルロールのコロとカラヤンが喧嘩して、発売までに時間がかかったという曰くつきの録音。
1952年録音のブライトクランク(疑似ステレオ)ヴァージョンです。
③ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第9番「ラズモフスキー第3番」・第11番「セリオーソ」
ブッシュ弦楽四重奏団(1933年・1932年録音)
*あまりにも懐古趣味ですが、室内楽好きにはブッシュ、カペー、ウィーン・コンツェルトハウスとか見るとつい手が伸びてしまいます。
④ウィーンのモーツァルト(ピアノ小曲集)
ピアノ:ヴァルター・クリーン
*個人的に偏愛するピアニスト。ソナタ集やまとまった小品集があるのですが、入手が容易ではないのでLPできけるだけでも確保。
クレモナさんでCDを購入するとプラ製のケースカバーに入れてくれます。それが、通常に販売している製品よりも、若干厚めで、丈夫なものであると思います(触った質感が明らかに違います)
LPカバーに収納された状態 |
そして、レコードや今は無きLDを購入すると、こちらも専用のカバーに入れてくれます。そのサイズ感がピッタリで、枠も印刷されていて、ケースに入るとLPの額縁みたいになり、風格がでます。今回初めて知ったのですが、このケース、ミリ単位で指定して作成してもらっていた専用ケースとのことでした。そのこだわり。さすがです。
そのケース自体も閉店に伴い無くなってしまうかと思うと、さびしい限りです。
そして、LPサイズ用の袋!こちらも特注品で、デザインが秀逸です↓
(表)無伴奏チェロ組曲第6番の楽譜 |
表面下に書かれた素敵なエピソードの拡大 |
(裏)大バッハの横顔 |
こちらは結構昔にコスト面もあり、紙からビニルにモデルチェンジしたので、今ある分だけとのことです。確か実家にもう一つあるはずです(これの白色ビニル製のヴァージョンも持っています)もちろんこちらも保存です。
金森さんのご厚意で2個いただきました。 |
約35年に渡り、音楽のきき方、演奏家の見極め方などなど教えていただきました。いまこうやってクラシック音楽をきいて悦びをみいだせるのは、中学の恩師と金森さんの影響力が大であります。ありがとうございました。
PS.閉店までまだ2カ月弱ありますので、またお伺いします―特別に1枚取り置きをお願いしてあるディスクもありますので。