古典的なソナタ形式では表現方法に限界を迎えた、もしくは形式的な音楽を書くことが苦手な?シューベルト、ショパンなど、ロマン派の作曲家が数多く手がけた「幻想曲(風)」と名付けられた楽曲でありますが、ショパンは1曲しか手掛けていません。幻想曲風のマズルカやポロネーズなどはありますが。
「幻想曲」という明確な形式があるわけではなく、作曲家の創作の趣くままに書いた作品を「無題」とするわけにもいかないのでとりあえず「幻想曲」と名付けている程度と考えてきけばいいと思います。
1841年、ノアンにあるジョルジュ=サンドの館で暮らしていた時期なので、彼の生涯では比較的落ち着いていた時に書かれた作品です。
幻想曲 ニ短調 作品49
冒頭は暗く、葬送行進曲のように弾きかれだします。重い足取りでポツポツと歩き出すような。そこに静かなメロディーが慰めるようにして入ってきます。行進曲風のリズムが始まると、曲に大きな動きが出てきます。
全体は5つの部分から構成されていて、上記の序奏ー提示部、そこから展開部ー再現部ーコーダとなっています。各場面での転調も多く次々と楽想が出てきて、リズムにも緩急があり、きく方は楽しめますが弾き手は大変そうです。
5分くらいのところでは、ショパンを激賞したシューマンのカルナバルの終曲、ダヴィット同盟の行進と似ているメロディーが顔を出します。これは彼へのオマージュか?
テーマそれぞれが繰り返されて、展開されていき、ショパンの作品のなかでもそのダイナミックで、がっしりとした構成が魅力の作品です。
個人的に12月~2月くらいの寒い冬と重なるイメージなので、この時期になるとききたくなります。
【Disc】
ミケランジェリが1967年にプラドで開催したオール・ショパン・プログラムのコンサートのライヴ録音。
コーダにかけての高揚感。そしてなんといっても、その澄んだ音色!出だしのところなどはゾックとします。幻想曲といった趣ではありませんが、もとより音楽はその名前ではなく、中身ですから。他の曲目も素晴らしいディスクです。
60年代のライヴ録音なので、状態に限界はあります。しかし、彼のショパンをきける事が貴重です。
あと、弟子のアルゲリッチは実演や録音などで弾いているのでしょうか?無いはずはないと思うのですが。もし情報をご存知の方はご教示下さい。
多くの方にとってはこちらの方がショパンらしいと思うのではないでしょうか?
透明感と万全のテクニックがきけるポリーニ盤。