音楽枕草子

クラッシク音楽や読書から趣味などの身辺雑記も含め、感想として綴ったblogです。

Selct Classic(4)~ドビュッシー:版画

ドビュッシーのピアノ独奏曲の代表作といわれるのは「前奏曲」や「映像」、そして人気のあるのは「ベルガマスク組曲」や「子供の領分」ですが、ここでは「版画」を取り上げたいと思います。

この曲は昔、まだ高校生の頃、クリスチャン・ツィメルマンのリサイタルできいていっぺんで好きになりました。それまでドビュッシーピアノ曲はなんだか、モコモコしていてはっきりしない音楽だなぁ~と感じて積極的にきいてきませんでした。しかし、ツィンマーマンのピアノは本当に美しくて、3曲め「雨の庭」の目の覚めるようなつやつやして、鮮やかな音色が忘れられません。

「版画」はドビュッシーが俗に「印象派」といわれる作風によるピアノ曲の技法を確立したとされる時期、1903年の作品で次の3曲からなります。

第1曲 パゴダ(塔)
これはパリ万国博覧会(1889年開催)で接し、彼の創作に大きな影響を与えたといわれる、ジャワのガムラン音楽に触発されているものとされていて、東洋風なスケールがアジアへの興味をかきたてる、神秘的な印象を受ける曲です。

第2曲 グラナダの夕べ
こちらは標題のとおりスペン情緒を感じさせて、ギターをかき鳴らしているみたいなメロディーが、グラナドスとかアルベニスを思い出します。そして、その昔スペインはイスラム支配下にあったことから、アラビア風を意識した「マカーム」も使われている異国趣味が前曲に続き、うまくハマっています。

第3曲 雨の庭
フランス庭園に降っている雨を描写しているといわれる曲で、長調短調が同居するなど、3分ほどの短時間の中に様々な作曲技術が凝縮され、ドラマティックな主張があります。日本庭園にしっとり降る雨ではなくて、雨量は強めで時々風も吹くといった印象です。新しい時代の音楽の響きであることをききては認識します。

面白いことにドビュッシー本人はアジアはもちろん、スペインにも行ったことが無いそうです。それは情報が地球規模でグローバルになろうとしていた時代だからこそ、創作された作品であるといえるかもしれません。

《Disc》
やっぱりツィメルマンもいいですが、3曲それぞれがとっても個性的な表現できけるフランスのピアニスト、サンソン・フランソワの1969年の録音が昔からの定番ではありますが、お気に入りの演奏です。