マウリツィオ・ポリーニさん追悼投稿の第2回目となります。
以前紹介できなかったおすすめのディスクを取りあげます。
定番のショパンやベートーヴェンは皆様もご存じで、推奨する方も多いと思いますので、あくまで個人的な思い入れディスクとなります。
〇モーツァルト:ピアノ協奏曲第19番・第23番(録音:1976年)
ピアノの美しい音!モーツァルト演奏の典型ではないでしょうか。これは共演がカール・ベーム指揮するところのウィーン・フィルということも影響しているのでしょう。
ポリーニのピアノがあのリストやバルトークの時とは異なって主張しすぎることがなく、きく方によってはあまりにもあっさりしすぎていると感じるかもしれませんが、典雅な弦楽器の音色、デリケートな木管楽器の調べ―ウィーン・フィルの美しい艶やかな音色(「ねいろ」と表現したくなる)と見事にマッチングしています。特に第23番の第2楽章にその共演効果が最も表現されていると思います。
このメンバーで他のコンチェルトも録音しておいてくれれば―第24番、第27番とか。。。後年のウィーン・フィルとの指揮&弾いたディスクもありますが、やはり当時のポリーニとベームがウィーン・フィルで残しておいて欲しかったです。
〇シューベルト:歌曲集「冬の旅」
これはディートリヒ・フィッシャー=ディースカウがポリーニと1978年のザルツブルク音楽祭で共演したライヴのディスクです。正規リリースされたのは約30年以上経過してからでした。この二人の共演はその後実現しませんでした。バレンボイム、リヒテル、ブレンデル、ペライアなどの名手とこの歌曲集を録音していったフィッシャー=ディースカウですが、ポリーニと正規録音を残さなかったのは演奏家の同士の問題か、レコード会社の問題か謎です。
ライヴという空間が両者をナーバスにさせていてるのか、良い緊張があるのでしょうか、この劇的な表現はまさに「極北の世界」。
印象に残る部分は第1曲「おやすみ」ピアノの弱音がクリアなこと!―第5曲「菩提樹」第2小節休符2つの絶妙な間合い(第27小節でも同様です)そして「AmBruner」と歌いだす詩の美しさ!―第11曲「春の夢」でははかない夢を断ち切るピアノのフォルテッシモの打鍵-第20曲「道しるべ」第7小節辺りの静けさ―死の淵を覗き込んだような瞬間にゾッとします。
そして最後の第24曲「辻音楽師」溶けることの無い、見渡す限り雪景色とひなびた寒村の風景。静粛の中から音楽を創り上げるシューベルトの才能がここに結晶となり描かれていると思います。
拍手が入っていますが、音の余韻が消えてから次第に大きな拍手になっていくのがいいです。その場に居合わせた聴衆も音楽に心を奪われたのだろう、と感じる瞬間ではないでしょうか。
今週は3月23日亡くなったマウリツィオ・ポリーニさんの追悼として個人的おすすめ(思い入れ)のディスク紹介でした。