音楽枕草子

クラッシク音楽や読書から趣味などの身辺雑記も含め、感想として綴ったblogです。

レコード芸術2023年総集編(ONTOMO MOOK)読了記録

昨年、2023年7月号をもって「休刊」した「レコード芸術」、公には「休刊」としていますが、紙媒体としては事実上の「廃刊」でしょう。その落穂ひろい?的にムック本として総集編が2月末(2024年3月1日)に発行されました。

レコード芸術休刊〜最終号購入 - 音楽枕草子

店頭で内容を確認してから購入するか決めようと思っていましたが、Amazonのポイント付与に釣られて購入ボタンを押してしまいました。

表紙デザインからして伝統継承といえるもので、中身も同様かな?と不安と共に先日読み終わりました。まず、きっと編集部がやりたかったのはこれではなかったのか?と思った表紙にも記載されている「ONTOMO MOOK レコードアカデミー賞」の記事です。

レコード芸術、日本のクラシック音楽界においても、特にその昔は影響力を持った「レコードアカデミー賞

1年間に発売された特選盤(ふたりの評論家が月評で推薦としたレコード、ディスク)から交響曲をはじめとした各ジャンルのノミネート盤の中から喧々諤々、評論家が話し合って年間ベストを選出するというシステムで、長くその音盤の販売数・評価にも影響した「権威」!?ある賞でした。

いわば「音楽之友社レコード芸術」の存在意義の重要な役割となっていたのではないでしょうか?だからこそ、今回の総集編発行にあたりその灯を消すには忍びなく、せめてもということで、休刊される2023年7月号までの特選盤から選出したのではないでしょうか?ただし、大賞とかを決めるのでなく、各担当ジャンルの執筆者が第1位から第3位までを選定という形を採っていますが。

もうそれ以外の記事は編集部も力を入れなかったのか、レギュラー執筆陣によるエッセイのような寄稿の羅列になっています。その中でもさすが片山杜秀さんの「クラッシック音楽の構造転換」は読み物として楽しめます。また、矢澤孝樹さんの巻頭言と「休刊後に思ったいくつかのこと」は特に後者に共感するところもあり、レコード芸術と音楽界に対する問題提起と提言に考えさせられました。矢澤さんは現在、音楽評論を生業にしていないそうですが、以前は水戸芸術館に勤務し、当時の館長であった吉田秀和さんの薫陶を受けた方でもあります。

そしてその吉田秀和さん。レコード芸術に長く寄稿され、彼が推薦するレコード・演奏家は良く売れたともいわれて、私はその文章を読むためだけに購読していた時期もあります。購読を止めたキッカケも吉田秀和さんが亡くなった時です。そういった読者はけっこう居たハズですが扱いが余りにも少ない、皆無です。その代り登場しているのが宇野功芳!氏です。

最終章(第4章)全てを『レコ芸』アーカイヴとして彼の月評から抜粋されたものが掲載されています。やはりレコード芸術を支えていたのは宇野功芳氏を信者のように崇めていた方々だったのでしょうか?

今後もあくまでこういったスタイル(書籍化)にて発行を継続しようとしているのでしょうか?音楽をディスク(レコード・CD)できかない時代に「レコード芸術」の活路を見出していくには非常に困難が伴います。しかし、それによって本当の「評論」「評論家」はどうなるのでしょうか?

それも音楽受容の新しい形だよ。と言われればそれまでですが・・・。

PS.別冊付録に「レコード・イヤーブック2023年1~7月号&補遺」があります。昔はこれを見て1年間に発売されたディスクの買いそびれた物や亡くなった演奏家など振り返り情報を得ていましたが、久し振りに目を通し最初に感じたのが「字が小さくて読めない。。。」です。ちなみに自宅に唯一残っている2012年版と比べてみましたが、体裁・文字サイズに大きな変化はありませんでした。

自身の体の劣化を改めて感じると共に、「レコード芸術」が重ねてきた歴史も、時代の変化の彼方に消えていくかと思うと寂しさもあります。