音楽枕草子

クラッシク音楽や読書から趣味などの身辺雑記も含め、感想として綴ったblogです。

Selct Classic(17)~ヴィターリ:シャコンヌ

今週ご紹介する1曲はバロック時代のイタリアの作曲家トマゾ・アントニオ・ヴィターリ Tomaso Antonio Vitali (1663~1745)のヴァイオリンと通奏低音のための変奏曲「シャコンヌト短調です。

ヴィターリは同じく当時著名な作曲家ジョヴァンニ・ヴァティスタ・ヴィターリを父親にもち、生涯のほとんどをモデナの宮廷楽団でヴァイオリニスト・作曲家として活動しました。

また、親子二代でモデナの宮廷学長を務めました。父親の作品はきいた記憶がなくて、息子の方もこの曲しかきいたことはありません。彼には申し訳ないですが、多くの歴史の中に消えていってしまう作曲家がある中で、300年以上前のこの1曲でも弾かれ、きかれ続けてきたことはきき手にもヴァイオリニストにとっても幸せなことではないでしょうか?

シャコンヌ」とはイベリア半島を起源とする3拍子の舞曲の一種で、イタリア半島に伝播してフランス~ドイツへと伝わりバロック時代には変奏曲における形式として定着しました(中でも最も名高いのは言うまでもなくJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番の終曲ですよね)しかし、その後の古典派~ロマン派になると古い音楽の形式と考えられて廃れてしまいました。

この曲はヴァイオリンの名人といわれたヴィターリによって様々な技法を駆使して主題と変奏が展開します。あまり深刻になりすぎず、かと言って情感もしっかり表現されています―この作風はこのジャンルにおける完成者といわれる、先輩アルカンジェロ・コレルリの影響があるといわれています。その流れが後のパガニーニへと繋がっていった種子があるように思います。

同じくヴァイオリン独奏曲として名高いバッハの「シャコンヌ」が孤高で他者を寄せ付けない存在としたら、こちらは地中海の気候のように明るさと華やかさをもっているので親しみがあります・・・しかし、近年では「偽作説」もあるそうですが。

《Disc》
愛聴盤―ベルギー出身の往年のヴァイオリニスト、アルテュールグリュミオー(1921~1986)とリッカルド・カスタニョーネのピアノによるものです。
「原典主義」を掲げる人からはグリュミオーが楽譜に手を加えて弾いていることや、伴奏がピアノであることから「マガイ物」扱いにされてしまう演奏かもしれません。でも、彼の華と艶のある音色がイタリアのこういった雅な音楽とマッチングしていて、1956年のモノラル・レコーディングですが透明感と輝きがあります。