音楽枕草子

クラッシク音楽や読書から趣味などの身辺雑記も含め、感想として綴ったblogです。

Selct Classic(22)~グリーグ:弦楽四重奏曲

ノルウェーの作曲家エドヴァルド・グリーグ(1843~1907)の代表作といえばもっぱらピアノ協奏曲と劇音楽「ペール・ギュント」ばかりが演奏会で取り上げられ録音の数も多いですが、室内楽作品にも秀作を残しています。

彼が完成させた唯一(他にもう一曲未完のものがあるらしいです)の弦楽四重奏曲 ト短調 Op.27は北欧の空気を感じる(行った事はないですが)作品です。以前きいた演奏会のメインプログラムになっており、好きな室内楽作品とひとつになりました。

これがベートーヴェンバルトークなどの弦楽四重奏曲に匹敵する作品とは言いませんが、同じ国民楽派といわれるスメタナドヴォルザークボロディンなどの弦楽四重奏曲をきく延長線上で十分に楽しめる音楽であることは確かです。

曲は1877年~78年、グリーグ30代半ばの作品です。構成は伝統的な4楽章から成ります。

第1楽章 ウン・ポコ・アンダンテの悲痛な嘆きのような序奏から始まりますが、曲は次第に動きを持ってアレグロモルトエド・アジタートの主部へと入っていきます。まるで陽と陰が交互に―激情と冷静な感情を行き来する様に曲が進むところが興味深いです。

第2楽章 アンダンティーノ(ロマンツェ) 冒頭チェロがローローと奏でるメロディーがデリケートで、実演できいたときもウットリときき惚れてしまいました。曲が進行していくとヴァイオリンなどほかの楽器も出番が与えられ全体的に穏やかに進みますが、折々で挟まれる細かいリズムのモチーフがアクセントになっています。

第3楽章 アレグロモルト・マルカート(インテルメツォ) 冒頭のメロディーはシューベルト弦楽四重奏曲「死と乙女」を連想するような感じがあります。トリオになるとノルウェーの民族舞曲風のメロディーが顔を出し、自然豊かな草原で若者たちが集まりダンスを踊っている風景が浮かんできます。ここでも陰と陽が巧みに交差して曲が作られています。

第4楽章 レント~プレスト・アル・サルタレロ 冒頭は第1楽章の序奏部のテーマが回帰しますが、急に音楽に動きがでてきてイタリア民族舞曲のサルタレロのリズムで曲に活気を与えます。この切迫感のある雰囲気、ここでもシューベルトの「死と乙女」との関連を感じます。第3楽章のテーマが顔を出したりしながら熱気を帯びていきます。これは北欧から太陽のサンサンと輝くイタリアへの思慕や憧れでしょうか?

全体を通じてシューベルトメンデルスゾーンなどのドイツロマン派の影響を受けつつ―彼の作品はよく言われますが―そこにグリーグの持つ北欧的抒情が融合したカルテットではないでしょうか。こうやってきいてみるとグリーグもけっこうメロディー・メーカーであると感じます。

【Disk】

コンサートの事前予習用で購入したオール・ノルウェー・プレイヤーによるディスクしか手元にありませんが、これがあれば十分といえる内容充実の演奏です。

ヴァイオリンⅠ:ソルヴェ・シーゲルラン

ヴァイオリンⅡ:アトレ・スーポンベルグ

ヴィオラ:ラルス・アンデルス

チェロ:トゥルルス・モルク

モルクは来日もしているので知っていますが、他は存じません。しかし、この曲の持っている瑞々しさや清らかさ、情熱がダイレクトに伝わってきます。いわゆる「お国もの」を手掛けているわけですが、その自信というのでしょうか、作品への敬愛を感じる演奏です。

ちなみに実演で聴いたときの演奏者とパンフレットです。

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