音楽枕草子

クラッシク音楽や読書から趣味などの身辺雑記も含め、感想として綴ったblogです。

Selct Classic(28)~ウェーバー:ピアノ協奏曲第2番

オペラ「魔弾の射手」を代表作とするカール・マリア・フォン・ウェーバー(1786-1826)はドイツ出身の作曲家で、モーツァルトの妻コンスタンツェが父方の従姉になるため、モーツァルトとは直接の血縁関係がない親族になります。

父が旅回りの劇団の座長であったことから各地の巡業に同行したので幼年時は英才教育を受けることはできませんでした。しかし9歳ごろから本格的な音楽教育を受けるようになると13~14歳頃に処女作のオペラを完成させているそうです(後に火災で焼失)

それ以降はオペラ劇場を中心に指揮者、作曲家として活動しました。また当時一流のピアニストとしても名高く、数曲のピアノ・ソナタをはじめ独奏曲も残しているそうです。ただし現在は「舞踏への勧誘」が、原曲のピアノ独奏曲としてではなくベルリオーズのオーケストラ編曲の方できかれますが。

協奏曲も自作自演用として2曲残しています。どちらも古典的な協奏曲の形式に則った急緩急の3楽章形式、演奏時間も約20分(3つの楽章の演奏時間もほぼ同じ)作曲も第1番(ハ長調 作品11)が1810年に完成され、第2番(変ホ長調 作品32)が1812年に完成されているので姉妹作といえます。

今回は編成が大きく(フルート×2、クラリネット×2、ファゴット×2、ホルン×2、トランペット×2、ティンパニ、弦五部)若干きき応えもある第2番の方をご紹介いたします。

第1楽章アレグロ・マエストーソ オーケストラによる序奏から導かれるようにして軽快な歌心ある―オペラ作曲家らしいメロディアスなピアノ・ソロが軽快に躍動します。

カデンツァは作曲者自身のものでたっぷりと華麗にピアノを鳴らすカデンツァらしいものです。しかしイヤミにならなくて好感が持てます。

第2楽章アダージョは弦楽器群と独奏ピアノがまるで室内楽のようにして歌い交わす親密性を感じます。

バレリーナが可憐に踊るような場面が浮かんでくる、ちょっと哀愁を帯びたところにもオペラ、劇音楽の作曲家の片鱗がきかれます。

第3楽章ロンド、プレストは第2楽章からアタッカで開始されます。躍動的で喜びに満ちたようなリズムが刻まれます。それに併せてオーケストラも騎士たちが行進してくるようなリズム(ホルンが印象的なリズムを刻みます)で音楽に動きを与えていきます。調性から考えるとベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」がウェーバー自身も意識して書いたと思いますが、それほど厳格な音楽にはなっておらず、モーツァルトの協奏曲との共通性を感じることの多い古典的な面とロマン派の融合した作品としてきくと惹かれるところも多いのではないでしょうか。

同じ2曲のピアノ協奏曲を作曲したロマン派を代表するピアニスト・作曲家のリストのそれがいかにも超絶技巧でピアノを鳴らす、きいていて時として少しウンザリする?作品に対してこちらはそういった印象は与えません。

ウェーバーのピアノと管弦楽の作品といえばもっぱら「コンツェルトシュテュック」が有名ですが(この作品は当初ピアノ協奏曲第3番として構想されたらしいです)協奏曲の方も機会があれば耳にして欲しい作品であります。

【DISC】

ピアノ:ゲルハルト・オピッツ

指揮:サー・コリン・デイヴィスバイエルン放送交響楽団(録音:1995年)

手持ちディスクはこちらしか所有していませんが(他のピアニストの録音や実演で弾いているのを見聞きしておりません)

正統派ピアニスト&指揮者、オーケストラの組合せが功を奏して作品の持ち味を過不足なくきかせてくれる上質な演奏ではないでしょうか。またカップリングが2曲の協奏曲と「コンツェルトシュテュック」、ピアノ独奏曲をリストがピアノとオーケストラ用に華麗な作品へと編曲した「陽気なポロネーズ」作品72という珍しい曲まできけるお得なディスクです。