音楽枕草子

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演奏会~OMF室内楽勉強会 ~リートデュオ・リサイタル~

私の地元松本市で毎年夏に開催されるセイジ・オザワ松本フェスティバル(以前はサイトウ・キネン・フェスティバルと名乗っていましたがいつの間にかこの呼称になっていました)

~この音楽祭のあり方についてはこのブログにさんざん書いて参りましたが・・・今回はオーディションを経て重鎮白井光子さんの指導を受けた歌手6人、ピアニスト6人のリートデュオ・リサイタルというプログラムは珍しいので出掛けてきました―白井光子さんのリサイタルもあり期待をしておりましたが、こちらは体調不良とのことでキャンセルとなってしまいました。

於:2025年8月11日(月)15:00~ 松本音楽文化ホール(ザ・ハーモニーホール)

個人的にリート(特にドイツリート系)が好きなので、恐らく白井光子さんの指導を受けたということはヴォルフ、シューベルト、シューマンなど曲目が並ぶのだろうと思ったら案の定、ストライク・ゾーンのプログラムでまずは期待が増しました(当日のプログラム↓)

2025|OMF室内楽勉強会 ~リートデュオ・リサイタル~ | セイジ・オザワ 松本フェスティバル (ozawa-festival.com)

bio_Mitsuko_Shirai.pdf (ozawa-festival.com)

個々の演奏について述べていくと長文になりますのでなるべく短めに―曲名はプログラム標記に準じた記載とします。

鯨 日和さん(ソプラノ)、加藤 梓さん(ピアノ)―トップバッターということもあり緊張もあったのでしょう、やや硬質なシューベルトとなりましたが、最後のヴォルフのメーリケ歌曲集でも名品の「エオリアンハープに寄せて」では曲頭におけるハープを模したピアノに伴われて朗誦のように歌い出される“Angelehnt an die Efeuwand…”「ツタの絡まった古びたテラスに寄りかかり…」(以下テキストについては私の拙い訳出になります)の声のしっとりとしていること!また後奏のピアノ伴奏も神秘的な響きでした!

三神 祐太郎さん(バリトン)、平尾 柚衣さん(ピアノ)―オール・ヴォルフで、アイヒェンドルフ歌曲集から4曲、ゲーテ歌曲集から1曲が歌われました。ユーモラスな作品が多く、恐らく三神さんのキャラクターとも会っているのでしょう、ゲーテ歌曲集からの「いい夫といい妻」ではコミカルな歌いっぷりが堂に入っていました。「小夜曲(セレナード」でも明るい歌声が曲とマッチしていました。

徐 阳さん(バリトン)、左近允 茉莉子さん(ピアノ)―1曲目のウルマン(1898-1944)の「宿命」は初めてきく曲でしたが、もっとも名前は知っていましたがウルマンの作品すらまともにきいたことがありませんでした。このナチス・ドイツよって「頽廃音楽」と烙印されホロコーストの犠牲になったユダヤ人作曲の作品をプログラミングする演奏家の慧眼が素晴らしいです。

作品は同時代のクルト・ヴァイルと通じるようなキャバレー・ソングを思い浮かべました。

他にシューマンの5つの歌曲集Op.40が歌われました―これも「リーダー・クライス」でもなく「詩人の恋」でもないのがいいです。

安定のある厚い声でメルヘンチックな曲集を軽快にピアノとの掛け合いも見事に歌いこなしていました。

ここで休憩が挟まれました―

後半は長谷川 陽向さん(バリトン)、丸岡 侑司さん(ピアノ)がスタートとなりました。曲目は若すぎる晩年シューベルトの傑作歌曲集「白鳥の歌」の「愛の使い」からブラームス(3曲)~グリーグの計5曲。

ヴォルフ、シューマンを中心にそれなりに集中を要する曲をきいてきて、ここでシューベルトのそれも良く知られた曲が歌われて少しほっとした気分、温かく心にスッと入ってくる居心地の良いメロディーに「やっぱりシューベルトのリートは最高!」と実感しました(もっとも「魔王」のようにデモーニッシュでやたら人を近づけない作品もありますが)

そこからのブラームス、彼のリートをあまりきいてこなかったことを反省しました。「墓地にて」Op.105-4の作曲者50歳を超えて老境に入ろうとしていた時期の作品でもあるのでシブい晩年の作品につながるところがあります。表現力豊かな歌声でくらい教会の墓地の空気を伝えてくれました(こういった曲好きです)次の「セレナーデ」Op.106-1はシューマンの交響曲第1番「春」を思わせる曲調が印象的です。ブラームスの歌曲においてもピアノの伴奏が重要と気付きました。単純な所があったかと思うと歌手に匹敵するくらい前にでてきたりと面白かったです。丸岡さんのピアノはそのあたりの加減が上手かったのでそれを気付かせてくれたのでしょう

レオニー・パウルスさん(ソプラノ)、出口 青空さん(ピアノ)―このおふたりが入ってきたときには会場の空気がパッと変わりました(衣装など華やかな所に目が行ったこともあるかも知れませんが・・)あのプリマドンな舞台に登場した時のあの感覚、パウルスさんは相当舞台経験を積まれた方なのだな、と思いました(会場で配られたプログラムには個別のキャリアが書いてなかったのでこのブログを書くにあたり音楽祭のウェブサイトにて確認したところ、オーストリア出身でオペラでの出演もされているとのこと。それも主要キャストで!)

1曲目シューベルトの「ギリシャの神々」D.677から魅力的な歌唱、圧倒的な声量で魅了されました。最後はヴォルフのゲーテ歌曲集から有名な「ご存知ですか、あの国を」(個人的には「君よ知るや南の国」の古い訳で親しんできた曲です)この歌とピアノが感情豊かに織り成す作品を盛り上がり

プログラム最後はハンス・ポートゥンさん(バリトン)、上田菜緒さん(ピアノ)―ヴォルフの2曲のリート(メーリケ歌曲集から「散策にて」「狩人の歌」)の表現力も素晴らしかったですが、マーラーの角笛歌曲集の「ラインの伝説」に感心しました!ライン河の水流のようなピアノに伴われて愛と憧れを歌い上げていました。一瞬、ベルント・ヴァイクルの歌唱を思い出しました。

歌手の皆さんの音楽性と表現力が豊かで発声、発音が明晰でした。(この辺は白井光子さん自身も欧米で活動するのにあたり相当苦労して現在に至ったと思います)

ピアニストの指遣いなども確認したかったので鍵盤が見える位置の席できいていましたが、「伴奏」などと言ってはいけないくらいに弾きながらも(ピアノ独奏曲並みの旋律を弾く楽曲もあります)絶妙なタイミングで協調・調和をきいていると高い技術と音楽理解がないと務まらないと思いました。それをこなした6人の奏者の才能!(歌手よりもピアノ奏者に目が行く時が多かったです)

終演後は会場できいていらっしゃった白井光子さんが登壇され今回のマスター・クラスの趣旨と成果、そしてご自身の病状についてご説明がありました。その姿と話しぶりからお元気そうだったので安心しました。

アンコールとして「夏の思い出」(作曲:中田喜直/作詞:江間章子)が出演者全員にて歌われました(ピアノは出口 青空さん)

まあ、これはあくまでサービスみたいなものでしたね。

白井光子さんがジェラルド・ムーア(往年のフィッシャー=ディースカウやシュヴァルツコップなどリート伴奏の名手といわれた)の例えをだして、歌手に対する伴奏者からリートは歌手とピアニストによる「デュオ」であると述べられたことを再認識するコンサートになりました。


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野暮な話になりますが、これで入場料1,000円!十分に元を取りました―それに比べ地方都市開催のコンサートでありながらオペラ、オーケストラコンサートのチケット代価格!・・・財団運営&補助金有、ボランティア・スタッフを使っているのに・・・疑問に思うところです。これ以上は以前に書いたブログと重複してくるのでこれ位に。

rochade.hatenablog.com

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しかし、ここ何年かは小澤征爾が指揮台に登らないまま亡くなってしまい、その継承、ビジョンが明確で無いままの音楽祭を継続する意義はあるのかな?と思います。

この際、今回のようなマスター・クラスを中心に避暑を兼ねた(実際長野県も相当暑いですが)若手・中堅音楽家の育成・発表を中心としたスケールへと変革させる機会ではないでしょうか。

こんな地方都市でオーケストラコンサート、オペラなど・・・どれだけ経済効果があるか知りませんが、行政が財団運営の資金源のひとつとなっているような・・・。

↓会場のアンケート回答でいただいたポストカード―やや辛目回答をしてしまったかな!?

8月31日はマーラー交響曲第2番「復活」(指揮:クリストフ・エッシェンバッハ他)の県民割チケットが入手できたのできいて参ります。

2025|オーケストラ コンサート Bプログラム | セイジ・オザワ 松本フェスティバル (ozawa-festival.com)

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