音楽枕草子

クラッシク音楽や読書から趣味などの身辺雑記も含め、感想として綴ったblogです。

完聴記~モーツァルト交響曲全集(その6)~クリストファー・ホグウッド

クリストファー・ホグウッド指揮アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックによるモーツァルト交響曲全集完聴記。今週はその第6回、番号の付いた4曲をきいていきます。

CD4

交響曲 第14番 イ長調 K.114

第2回目のイタリア旅行から帰った1771年の12月に書かれたといわれています。

楽器編成がオーボエに替りフルートが使われているため色彩的な響きがします。第1楽章ののびやかな旋律がオーストリアの田園風景が広がる感じです。

ここではコンティヌオ(チェンバロ)がかなりきこえてきます。

第2楽章アンダンテではフルートから持ち替えられたオーボエと弦楽器が牧歌のようなメロディーをきかせてくれます。この柔らかな音楽はモーツァルトの進化を示すものと思います。

第3楽章はすこし攻撃的なメヌエット。長・短調の交代が面白く、トリオでは哀愁を漂わせます。

終楽章モルトアレグロは鋭い信号音みたいな和音から始まってスピード感に溢れていて喜びの爆発みたいです。

全曲を通じて管楽器に多少独立性が出てきたり、書式がきっちりしてくるなどの個性が感じられる初期シンフォニーの中では注目するべき作品であると思いました。

★★★★

追加のように以前はこのシンフォニーのために書かれたといわれていた1分ほどの短いK.61gⅠのメヌエットが演奏されています。ただし、現在ではこの作品は信憑性が疑われています。。。

交響曲 第15番 ト長調 K.124

ザルツブルクで1772年2月に作曲されたといわれ、この年に何曲も書かれたシンフォニーの1曲めにあたります。

今までの作品にあったイタリアの太陽を浴びた明るさだけでなくて、オーボエやホルンに弦という基本的な編成を使いながらも重厚さというのか陰影がついています。第3楽章のメヌエットのつくりはセレナードやディヴェルティメントに含まれているような軽いもの。もっともこの当時シンフォニーやそういった娯楽音楽との明確な区別はなかったのですが・・・。

終楽章は第14番のシンフォニーみたいな和音を合図にスタートしますが、それに比べるとこちらは少しせっかちでまるで急いで書き上げたような印象を受けます。

★★☆

交響曲 第16番 ハ長調 K.128

1772年5月に続く第17番、第18番の3曲はザルツブルクで新しく司教に就任したコロレド伯に自分の才能をアピールするために書かれたといわれていますが、確かにそれぞれの曲に「ああしよう」「こうしよう」と考えられた跡が感じられます。

このシンフォニーはメヌエットが無い3楽章の曲ですが、第1楽章では転調が多用されたり振り幅の大きい曲です。

アンダンテ・グラツィオーソの第2楽章はおだやかで眠気が襲ってきそうな音楽です。

終楽章は落ち着きがあるのですが、最後のほうでいななくホルンが印象的です。

★★★

交響曲 第17番 ト長調 K.129

この曲も3楽章から出来ています。ト長調ということもあってか、これから何か楽しいことが始まりそうな第1楽章。リズムの交代が曲に勢いを与えています。

第2楽章は澄んでいて典雅な、ちょっとハイドンを思わせるような雰囲気です。

終楽章は「狩りの音型」といってもいいモーツアルトのシンフォニーをきいてきている私には既におなじみのテーマがホルンのいななきによって元気に提示され、曲を勇壮に盛り上げられます。

★★★

【演奏メモ】

珍しいメヌエットK.61gⅠは思いっきりゆっくりなテンポで意表をつく技できかせ面白いです。

どの曲も朗らかで伸びやかに歌う各楽器からは青年モーツァルトがシンフォニーで色々な試みをしていたことを感じることができると思います。